ラヴェルの「ボレロ」について
モーリス・ラヴェルの「ボレロ」は、イダ・ルビンシュタインのバレエ音楽として委嘱され、1928年に作曲されました。
その後、単独の管弦楽曲として広く演奏されるようになり、ラヴェルのオーケストレーションの能力を発揮した代表作の一つとして知られるようになりました。
「ラヴェルの『ボレロ』」の特徴は、同じリズムが保たれている中で、2種類の旋律が繰り返される反復的な構造にあります。はじめ一つの楽器で静かに始まりますが、同じ旋律が繰り返されるたびに楽器が加わってオーケストレーションが豊かになり、壮大なクライマックスに達した後に突然終わります。
この「繰り返されるたびに要素が増えて行く」という構造を映像で表現した作品が、No.37「映像でのリピート表現」で紹介しているズビグ・リブチンスキーの「TANGO」です。
※ なお、拙著「アニメーション - 想像をいざなう形と動き」で、ラヴェルの「ボレロ」がスペイン舞曲を元に作曲したと書いてありますが、両者は「ボレロ」という名前が同じであることとダンスリズムを用いている点以外は関係がなく、ラヴェルが独自に作曲したものです。お詫びして訂正します。
NHK交響楽団による「ボレロ」演奏
YouTubeにNHK交響楽団による「ボレロ」が上がっていましたので、リンクして紹介させていただきます。冒頭のスネアドラム(小太鼓)から、各楽器が加わって壮大なクライマックスに盛り上がって行く様子がよくわかる映像だと思います。
指揮:準・メルクル(Jun Märkl) コンサートマスター:堀正文
2009年6月17日 第1651回定期公演
※ ここでのムービーは、YouTubeにリンクして表示しています。YouTubeで削除されて表示されないことがありますが、その場合はご容赦ください。
アニメーション「ネオ・ファンタジア」での「ボレロ」
「ネオ・ファンタジア(Allegro Non Troppo)」監督:ブルーノ・ボゼット(Bruno Bozzetto)1976年は、ディズニーの長編アニメーション「ファンタジア」と同様にクラシック音楽に合わせた数編のアニメーションで構成されていますが、モノクロのコミカルな実写映像と絡ませる形でアニメーションが用いられていて、ディズニーとはひと味違う風刺的な要素も含んだユーモアのある作品です。また、モノクロの実写映像がカラフルなアニメーションを引き立てています。
この作品の一部として、ラヴェルの「ボレロ」に合わせて展開するアニメーションがありますので、紹介したいと思います。
このシーンでは、実写で指揮者が放り投げたコーラのビンが、アニメーションの荒涼とした惑星を去る宇宙探査機から捨てられたビンに変わり、ビンに残った液体から生命が生まれて進化が始まります。その後「ボレロ」の音楽の高まりに合わせて、進化した生物の行進で賑やかになり、大団円を迎えます。
※ この作品はリンクしてこのページでご覧いただくことができないので、下のタイトル部分をクリックしてご覧ください。
「ネオ・ファンタジア」のDVDパッケージと「ボレロ」のシーン
モーリス・ラヴェルについて
モーリス・ラヴェル(1875年3月7日 - 1937年12月28日)は、フランスの作曲家で、20世紀初頭の音楽において最も重要な人物の一人です。彼は印象派音楽の代表的な作曲家の一人として知られていますが、自身のスタイルを独自に発展させ、多岐にわたるジャンルで作品を残しました。
ラヴェルの音楽は、繊細かつ精緻なオーケストレーション、革新的な和声、そして鮮やかな色彩感で知られています。彼の作品はしばしば詩的であり、視覚的なイメージや物語を音楽を通して表現することに長けていました。
代表作には、「ボレロ」のほか「ダフニスとクロエ」、「水の戯れ」、「鏡」、「スペイン狂詩曲」、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「弦楽四重奏曲ヘ長調」などがあります。
また、モデスト・ムソルグスキーが1874年にピアノ独奏用に作曲した組曲「展覧会の絵」を、1922年に豊かな音色のダイナミックな管弦楽曲として編曲し、それはオーケストラ音楽の中でも最も卓越した編曲の一つとして世界中のオーケストラによって頻繁に演奏されています。