アニメーション
想像をいざなう形と動き
想像をいざなう形と動き
連続した静止画像から動きのイリュージョンを作り出す原理と、映画・アニメーショ ンのメカニカルな仕組みを紹介します。
映画が誕生するために必要であった三つの技術(映写、アニメーション、写真)それぞれの発展の歴史と、それらが統合されて映画が生まれた様子をたどります。
映画の誕生後、その映画の技術を利用しながら発展し、さらにコンピュータの登場にも対応したアニメーション表現を、世界の様々な作品とともに振り返ります。
メディアとしてのアニメーションの特性と、その特性ゆえに生まれた技法や素材の多様性について考えます。
アニメーションの誕生以来、その原理を利用して、現在も玩具やディスプレイとして親しまれている動きを楽しむ装置とその仕組みを紹介します。
2Dアニメーションでの立体的な見せ方の工夫や、柔らかさや重さを感じさせる基本的な表現技法を説明します。
アニメーション制作で、動くものと環境との関係を表現するために必要な、基準となる空間の座標点について解説します。
動きを自然に見せたり、大きな動きを強調したり、瞬間的な速い動きを知覚させるために必要な技法を紹介します。
集団の動きをより自然に見せたり、素材や環境の性質を表すために利用する時間的な遅延(タイムラグ)について具体的に見ていきます。
もともと作画の負担を軽減するための技法ですが、機械的な繰り返しの動きだけでなく、自然現象を単純な繰り返しの組み合わせとして表すことも行われます。
アニメーションで動きを作る際に基本となる、全身運動としての「歩き」の分析と、歩く人を追って背景を動かす際の注意点などを紹介します。
映像の演出にとって大切な要素である音響の種類と、それぞれの効果について述べます。
著者:ハロルド・ウィティーカー、ジョン・ハラス
出版社:ダヴィッド社
訳者:青木義郎
(1983年)
ジョージ・オーウェル原作のアニメーション「動物農場」(1953)の監督で、イギリス・アニメーション界のパイオニアとして活動したジョン・ハラスが、ハラス&バッチェラースタジオのアニメーターであったハロルド・ウィティーカーとともに著したアニメーションの技術書です。
古い本ですが、アニメーションを制作する上で重要なタイミング技法の基本をわかりやすく解説しています。
原書は1981年に「Timing for Animation」というタイトルでイギリスで出版されましたが、ピクサー社のジョン・ラセターは、2009年に再販されたこの本の序文で、コンピュータでアニメーションを作るようになった現代、ますますこの本の重要性が増していると述べています。("Timing for Animation -Second Edition" Harold Whitaker John Halas updated by Tom Sito published by Focul Press)
目次:
言葉、文様、音楽など、様々なメディアで使われている繰り返しの表現を紹介し、映像やアニメーションへの応用の可能性も考えてみます。
あるイメージから別のイメージへ変化することで、意味が激変し、驚きとともにメッセージ性の強い表現が可能になります。様々なメディアでの変形表現の面白さを紹介します。
象徴的な表現を用いることで、普遍的な強いメッセージを伝えることが可能になります。象徴性の意味と、それを使ったいろいろな作品を見ていきます。
コンピュータを介在させることで、ユーザーの操作に応じて反応するような表現が可能になりました。それを使ったメディアの広がりについても考えてみます。
著者:ブルーノ・エルンスト
出版社:朝日新聞出版
訳者:坂根巌夫
(1983年)
1976年に出版された「The Magic Mirror of M.C. Escher 」の日本語訳。
エッシャーが生み出す作品は、連続性や遠近法、鏡面と空間といった構造的な面白さを追求したもので、単に形の美しさや雰囲気・感情を表そうとしたものではありませんでした。
エッシャーは、旧来の芸術からは一線を画した分析的なアプローチで作品を作り、モザイク模様の独特の絵画や二次元平面でのみ可能な在り得ない世界を生み出していきました。
この本は、エッシャーと親交のあった著者が、エッシャーが残したスケッチや話も引用しながら、その生い立ちから、作品の背景や構造まで丁寧に解説しています。
エッシャーが高く評価していたというルネ・マグリットをとりあげ、シュールリアリスムとエッシャーの作品との違いに言及している点も興味深い部分です。
両者とも視覚的な驚きに満ちていますが、マグリットの記号論的な面白さに対して、エッシャーは幾何学的、数学的な面白さと言えるのではないでしょうか。
エッシャーの画業の全体像がわかる本です。
1976年に出版された英語版(左)とオランダ語版(右)の表紙
第一部 絵を描くことはだますことである
第二部 あり得ない世界
あとがき
作品索引
人間の知覚の仕組みを研究した心理学での成果や、それを応用した錯視の不思議さ、認知の仕組みにおける動きの重要性なども紹介します。
対象の形を単純化することによる効果と、単純化した場合の静止画像と動く画像の違いも考えてみます。
あるものを別のものに見立てる、あるいはそう見えてしまう仕組みと、それを楽しむ文化について考え、単純な形態を使って、何らかの意思を持ったものに見立てたアニメーションの例を紹介します。
カニッツァ
「視覚の文法」ゲシュタルト知覚論
著者:G. カニッツァ
監訳者:野口薫
出版社:株式会社 サイエンス社
(1985年)
原著:"Organization in Vision: Essays on Gestalt Perception" by Gaetano Kanizsa
(1979)
画家としても活動したイタリアの心理学者G. カニッツァが、実験を元に豊富な図解を用いてゲシュタルト心理学を解説したした本です。
ゲシュタルト心理学の祖であるヴェルトハイマーやケーラー、コフカ、さらに師として仰ぐメッツガーの論をふまえながらも、さらに独自の見解を述べています。
人間の視覚の不思議さを紹介していますが、「視知覚に関するエッセイ」とうたっているように、わかりやすい図解とともに楽しく読み進められる本になっています。
目次
訳者まえがき
まえがき
謝辞
参考文献
邦訳文献
人名索引
事項索引
フィルムを使い、黒味を挟んで1コマずつ投影する映画とは違う、走査線を使ったテレビ映像の、動く仕組みについて解説します。
映像に対する独特なアプローチで、アニメーション界に大きな影響を与えたノーマン・マクラレンと、彼の元から輩出したアニメーション作家たちの作品を紹介します。
著者:ヤーコブ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート
訳者:日高敏隆、野田保之
出版社:思索社
(1973年)
原著:"Streifzüge durch die Umwelten von Tieren und Menschen : Bedeutungslehre"
by Jakob von Uexküll, Georg Kriszat
(1934)
私たちは世界を、映画を見るように眺めているだけではありません。
常に環境からの刺激を知覚し理解して、次の行動を起こします。
このようにして世界を理解しているとすれば、それぞれ違った感覚器官と身体機能を備えた他の動物たちは、どのような世界像を作り上げているのでしょうか。
ユクスキュルは、それぞれの動物が知覚し作用する世界の総体が、その動物にとっての環境であるとし、「環境世界」と名づけました。
これらの研究は動物行動学の先鞭となり、翻って人間が世界をどう捉えて関わっているのかを客観的に考察することにもつながっています。
目次
訳者まえがき
まえがき
謝辞
‥‥‥ヤーコブ・フォン・ユクスキュル、ゲオルク・クリサート
‥‥‥ヤーコブ・フォン・ユクスキュル
新しい生物学の開拓者‥‥‥アドルフ・ポルトマン
環境世界の研究ー主体と客体とを含む自然研究として‥‥‥トゥーレ・フォン・ユクスキュル
本書のために‥‥‥フィッシャー版編者序
訳者あとがき
- その他の図書 -
「動物は世界をどう見るか」(1995年)
著者:鈴木光太郎 出版社:新曜社
ユクスキュルの論を基礎に置きながら、さらに多くの動物の感覚器官を考察し、知覚の研究を深めています。最後の「シミュレーションの落とし穴」の章では、動物の環境世界像は感覚器官からの刺激を脳が総合して形づくっているので、「動物の視覚世界のシミュレーションと称するものの多くは、実際には網膜像のシミュレーションであって、知覚世界のシミュレーションではない」と述べ、人間が動物の環境世界を想像することの難しさ(不可能性?)に触れています。
「動物と人間の世界認識 ーイリュージョンなしに世界は見えない」(2003年)
著者:日高敏隆 出版社:株式会社 筑摩書房
ユクスキュルの「生物から見た世界」を元にし、「イリュージョン」という言葉を使って、動物の知覚世界や人間の環境認識、遺伝子や進化論について解説しています。
ユクスキュルの論を、わかりやすい言葉で平易に説いた入門書です。
「映画の考古学」
著者:C.W.ツェーラム
出版社:フィルムアート社
訳者:月尾嘉男
造本:杉浦康平+鈴木一誌
(1977年)
豊富な図版を掲載して、映画が誕生する前の様々な開発者達の膨大な発明と、映画誕生初期の歴史を紹介しています。
光学的なあるいは生理学的な発明発見が、映画という一つの完成されたメディアへと収斂し、大きな産業へ変貌を遂げる様が描かれています。
目次
凡例
まえがき
エピグラフ
文献
索引
訳者あとがき