第2章 タイミング技法

No.28

自然界の動き


自然界の動き

 

アニメーションでは、複雑な自然現象をシンプルな繰り返しの動きとして捉え、表現することが行われます。運動をどう表現するかは、作者が動きをどういうふうに分析し、どういう演出意図のもとに表そうとするかによっても違ってきます。従って正解はひとつではなく、作者それぞれの工夫、また表現スタイルによっていろいろな形がありえます。
ここでは自然現象を繰り返しの動きとしてとらえた表現例をいくつか紹介しています。これらは、あくまで単純化の一例として参考にしていただければと思います。

 
 
 

噴煙と線香のけむり

 

上記「噴煙」のパートで紹介した煙の描き方を用いて、火山の噴火活動によって周辺に火山灰が撒き散らされる様子を解説したアニメーションと、線香の煙のアニメーションです。
噴火のアニメーションは円の集合の動きとして描いています。また線香の煙の消し方として、同じ煙のアニメーションをマスクとして用い、両脇から挟み込んで徐々に消えるようにしています。

※ 下のサムネールをクリックしてムービーを選んでください。

 
                 
 
 
 

ジョン・ハラスの「炎」と「湧き水」

 

「アニメーションのタイミング技法(Timing for Animation)」 ハロルド・ウィテカーとジョン・ハラス(Harold Whitaker and John Halas)から「炎」と「湧き水」の作画例を引用して実際に動かしてみました。

 

炎の表現例
温められた空気が炎を上方に押し上げ、押し上げられた炎はちぎれて消えて行きます。下図では、空気の ×印の部分が地面の方から上昇し、炎と一緒に消えています。
このアニメーションでの動きは非常に素早く単調なので、違う動きも挿入して不自然さを緩和することも行われます。

 

湧き水の表現例
水は弱い表面張力によってひと塊りになっているので、まとまりとして描きます。湧き上がった水は放物線を描くように広がり、広がるに従ってバラバラになりながら落ちて行きます。
水滴も大体のまとまりとして動きが描かれれば、個々の動きを追う必要はありません。

 
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「炎と煙の実写映像」

ビデオで撮影された炎と煙の映像を紹介します。
聖火台の大きな炎、キャンプファイヤーの炎、ろうそくの炎、それぞれ大きさによって形も変わってきます。また煙突から立ち昇る煙や台所の湯気も、白いかたまりの動きとして見ることができます。
※下の矢印をクリックしてごらんください。

 

ろうそくの炎

    

ろうそくの炎はシンプルな紡錘形に近い形で動きが少なく、蝋(ろう)が溶けて蒸発しガス状になって燃えるため、炎の根元部分は青くぼやけています。
また息を吹きかけるなどすると、一瞬大きく揺らぎます。
蛇足ながら、下記にろうそくを観察していた時に目に焼き付いた残像のイメージを載せました。
黒い背景で見ると赤く、白い背景では青く見えました。

 
 

「雪の実写映像」

雪は白くふわふわ舞いながら、比較的ゆっくり落ちてくるので、雨などに比べて映像で捉えやすい被写体です。しかし、やはり少し風などにあおられると1フレームのシャッタースピード内で少し移動するので、雪の粒は肉眼より細長く写ります。

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ニーナ・ペイリーの炎

   

アメリカのアニメーション作家 ニーナ・ペイリー(Nina Paley)の代表作「セーデル・マゾヒズム(Seder-Masochism)」から燃える木の表現の一部を紹介します。
ここでの炎は、立ち昇る炎の断片を位置とタイミングを変えて繰り返し用いることで、リアルではありませんが炎としての美しい表現になっています。
彼女は、洗練されたシンボリックな表現で、シンプルながら深い味わいの作品を手がけています。

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