立体アニメーション例
アニメーション映画黎明期から、すでに身近な立体物をコマ撮りして動かすことは行われていました。
その後、体のパーツを可動式にした人形にポーズをとらせながらコマ撮りして動かす人形アニメーション、素材に粘土を使い変形させて動かすクレイ・アニメーション、生身の人間をコマ撮りするピクシレーションなど様々な技法が生み出されました。
ここではいろいろな技法のアニメーションを取り上げて紹介します。
・『シュッシュッ(Tchou-tchou)』コ・ホードマン 1972年
・『セット イン モーション(Set in Motion)』 ジェーン・アーロン 1987年
・『グレート コグニト(The Great Cognito)』 ウィル・ヴィントン 1982年
・『対話の可能性(Možnosti dialogu)』ヤン・シュヴァンクマイエル 1983年
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「シュッシュッ」
カナダ国立映画局(NFBC)で、様々な素材を使った実験的な立体アニメーションを制作してきたコ・ホードマン(Co Hoedeman)による積み木を使った立体アニメーションです。
積み木の各面に 頭、胴体、足など、身体の部分が描かれ、それらを組み合わせて作られています。
また各パーツも、それぞれの動きのフェーズが描かれた積み木が用意されていて、それらを置き換えながら位置を移動させて動きを作り出します。
飛び上がる動きは、一瞬、透明な支柱を挟み込んで浮かんだように見せています。
フレームごとに置き換えて動きを作るアニメーションの特徴を、積み木という素材に生かしたユニークな作品となっています。
ちなみに原題の「Tchou-tchou」は、蒸気機関車が吐き出す蒸気の音を表したフランス語のオノマトペで、日本の子供達が機関車ごっこで使った「シュッシュッ・ポッポ」に当たります。
◆ コ・ホードマンのその他の作品 ◆
・「砂の城(The Sand Castle)」1977年
https://youtu.be/hzvqmoPu2H4
砂から作られた不思議な生き物たちが、協力し合いながらお城を作っていきます。
生き物のユニークな造形と、砂から生まれた建造物の儚さが印象的です。 この作品は、Appendix No.55「マクラレンとNFB」でも改めて紹介しています。
・「チャールズとフランソワ(Charles and François)」1988年
https://youtu.be/sqgPOpJlZog
おじいさん(チャールス)と彼の孫(フランソワ)の物語です。
孫が少年時代、おじいさんと頭を取り替えてそれぞれが見える景色に驚いたりしますが、歳を重ねて孫も大人になり、またさらに、おじいさんと同じような老人になっていきます。
愛情あふれる彼らの人生の各段階を描き、味わいのあるストーリーが展開します。 立体的なセット空間に、平面に描かれたキャラクターを置き換えながら動きを作り出すユニークな技法で作られています。
・「悲しみの白クマ(The Sniffing Bear)」1992年
https://youtu.be/qm_oKCRXpSY
北極の氷原で、人間が捨てていったガソリンの缶の有害な匂いに引かれ、危うく死にかけた白クマの物語です。
アザラシ、フクロウなどイヌイットにおなじみの仲間に救われますが、人間による環境汚染や有害な化学物質を訴える教育的な内容となっています。
この作品も、「チャールズとフランソワ」同様、立体的なセット空間に、平面に描かれたキャラクターを置き換える実験的な技法で作られています。