第1章 アニメーションの原理

No.06

コンピュータを介在させたアニメーション


 

CGアニメーションのパイオニア達

ここではコンピュータを介在させたアニメーションのパイオニア達を紹介します。
第二次世界大戦中に暗号解読や弾道計算のためにコンピュータの開発が進みましたが、戦後さらに発展したコンピュータを使ってグラフィカルなイメージを生成する試みが始まりました。
それらはコンピュータを、単に省力化や複雑な数値計算のための道具としてではなく、情報を視覚化したり、コンピュータならではの新しい表現の可能性を探るための道具として捉えたものでした。
音楽と映像の間に類似性と相補的関係があると考え、コンピュータを使って時間とともに数式が描き出す造形の美しさを追求したジョン・ホイットニー、コンピュータ独特のメタモルフォーゼを駆使した作品を作ったピーター・フォルデス、3DCGアニメーションで無機的なものに生命と感情を吹き込んだジョン・ラセター、それぞれの作品を紹介します。
下のタイトルをクリックしてお選びください。  

・『飢餓(Hunger)』ピーター・フォルデス 1973年

・『ルクソーJr.(luxo jr)』 ジョン・ラセター 1986年

・『ルクソーJr.(luxo jr)』 ワイヤフレーム・テスト

※ ここでのムービーは、YouTubeにリンクして表示しています。YouTubeで削除された場合は表示されないことがありますが、その場合はご容赦ください。  
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「飢餓(Hunger)」

NRCのネストル・バートニクが開発した、キーフレームとキーフレームの間をコンピュータに中割りさせてアニメーションを作成するシステムを用いて、ピーター・フォルデスは1年半の制作期間を経て「飢餓」を完成させました。
これは、コンピュータを使った具象的なストーリー性のあるアニメーションとして最初期の作品であると同時に、人間の手作業では不可能な無機的な中割りの効果を生かした作品としても革新的なものでした。
コンピュータによる視覚的な面白さだけでなく、内容的にも、豊かな世界の人間の欲望と、そこからは見えない貧困に苦しむ世界の落差を描いて、強烈なインパクトを観るものに与えます。  
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フォルデスによるその他の作品

ピーター・フォルデスはコンピュータを使用する以前にも、旧来の手書きによるメタモルフォーゼを駆使した作品を手がけていました。
その一つが「鳥の食欲(Appétit d'oiseau)」1966年で、男性がライオンに、女性が小鳥になぞらえ、パブロ・ピカソの絵画を彷彿とさせるキャラクターを用いて、欲望とその暴力性を描いています。

(下記URLをクリックすると新規タブでYouTubeのページが開きます)
https://youtu.be/DmwOnpGYvf4
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ジョン・ホイットニーのアニメーション

アメリカ、カリフォルニア州出身のホイットニー(John Whitney)は、パリで12音作曲を学ぶなど、音楽にも精通していましたが、1939年からは弟のジェームズとともに抽象的な実験映画の制作を始めました。
彼は試行錯誤を重ね、音楽の原理を視覚的な動きの造形に活かす方法として、最終的にコンピュータを用いた表現にたどり着きました。
ここでは、その代表的な作例として、アナログ・コンピュータを用いた「カタログ」と、当時の制作過程を解説した「Experiments in motion graphics」、デジタル・コンピュータを使ってさらに発展させた代表作「アラベスク」を紹介します。
(残念ながら、画質がかなり劣るものも含まれますが、本質的な面白さは伝わると思います。 ご了承ください。)
なお、ホイットニーが自身の思想と作品の解説をした書籍「デジタル・ハーモニー 音楽とビジュアル・アートの新しい融合を求めて」1984年 発行所;産業図書株式会社 (原著:Digital Harmony On the Complementarity of Music and Visual Art)もご参照ください。  

・「カタログ(Catalog)」 1961年

・「Experiments in motion graphics」1968年

・「アラベスク(Arabesque)」 1975年

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「カタログ」

若い頃から音楽と機械制作、また実験的映画制作に熱中していたホイットニーは、映画の限界を感じ、視覚的流動体を作る機械を制作したいという願望を持つようになったといいます。
そして機械式のスリット・スキャン撮影法モーション・コントロール・システムを開発していきましたが、その後、第二次世界大戦の対空砲照準器を改造した新たな装置を発明し、アナログ式コンピュータ・グラフィックを用いたCMや映画・テレビのタイトルを手がけるようになりました。
「カタログ」は、この装置から生成される視覚効果を世に知らしむべく制作されたデモリールです。
ここで使用されている技術は、SF映画『2001年宇宙の旅』の終盤、スターゲートに突入するシーンで、スリットスキャン技法を使用するアイデアを与えたといわれています。
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