アニメーションの原理は非常にシンプルなので、これまでに紹介してきた装置以外にも様々なものが作られ、科学館などでの展示物や市販の玩具として、多くの人々に親しまれてきました。
ここではその例をいくつか紹介します。
アニメーションの原理は非常にシンプルなので、これまでに紹介してきた装置以外にも様々なものが作られ、科学館などでの展示物や市販の玩具として、多くの人々に親しまれてきました。
ここではその例をいくつか紹介します。
ストロボ・アニメーションは原理的にはフェナキスティスコープやゾートロープと同じです。
フェナキスティスコープは、鏡に映る回転する円盤の画像をスリット越しに見ることで、一旦視界が黒く閉ざされた後に見える画像は、前の画像より一つ後の画像に置き換わっています。
このスリットのついた円盤を用いるかわりに、ストロボ・アニメーションでは暗い部屋で点滅するライトを用います。
回転する円盤上に一連の動きのポーズをもったフィギュアが並べられていて、その回転スピードとライトの点滅が同期した時、回転するフィギュアが同じ位置で動きを繰り返すように見え始めます。
フェナキスティスコープと違いフィギュアの存在する空間の明るさ自体を変えるため、立体を扱え、巨大な装置も作ることが可能になります。
「Die Falle」グレゴリー・バーサミアン 1998年
ここではストロボ・アニメーション例として、YouTubeで紹介されているグレゴリー・バーサミアン(Gregory BARSAMIAN)が1998年に制作した「Die Falle(罠)」をご覧いただきます。
この作品はロンドンのキネティカ・ミュージアム(Kinetica Museum)に展示されていて夢のような不思議な空間を作り出しています。
バーサミアンの作品は日本ではNTTコミュニケーション・センターで「ジャグラー(Juggler)」1997年が常設展示されています。
スリット・アニメーションのように、数枚の動く絵をスリット状に一枚の平面に合成した元絵を使います。
レンチキュラーレンズと呼ばれる線状のレンズが並んだシート越しに角度を変えて見ることで、動きのイリュージョンが得られます。
スリット・アニメーションは、画像が黒いスリットの隙間から表示されるだけなので暗いですが、レンチキュラー印刷のアニメーションはレンズの反射角を利用しているので明るいイメージが得られます。
本やノートなどの隅に動く絵の落書きをした経験は、誰にもあるのではないでしょうか。
フリップブックは1832年のフェナキスティスコープ発明から35年後にジョン・バーンズ・リネットが特許をとり、製品化されました。
最も簡便な、動きのイリュージョンを得る装置として、今も多くの製品が市販されています。
ここでは、No.06「コンピュータを介在させたアニメーション」で紹介したピーター・フォルデスによるアニメーション「メタデータ」を元にした作品と、2008年に授業での課題作品として作られたアニメーション「HANDS」を元にした学生作品を紹介します。
メディア・アーティスト 岩井俊雄
1988年に大崎駅の近くにあるO美術館での企画展「アニメ進化論—日本の実験アニメの現在」で初めてみた岩井俊雄の作品「時間層Ⅱ」に、私は大変強い印象を受けました。
それは複数の切り抜きの写真が散らばった円盤が回転していて、その上にテレビのモニターが下向きに設置され、真下の円盤に向けて点滅する光を放っていました。
その点滅のリズムが変わるごとに、単に流れてぶれて見えるだけだった写真画像がくっきり浮き上がって見え、互いに入れ替わるように動き始めたり、またぶれて流れる画像に戻ったりを繰り返し、視覚的な不思議さにあふれたものでした。
その後も岩井俊雄は、ステッピング・モーターを使いスリットや鏡を使わずに動く画像を得る装置や、スリット状の光を回転する家の模型に傾きを変えて当てて家を歪ませて見せる実験を行うなど、シンプルなメディアを使いながらも人間の視覚の面白さを際立たせた作品を作ってきました。 彼の作品は、NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)やジブリ美術館の常設展示で観ることができます。
「時間層Ⅱ」1985年 ©Toshio Iwai
2024年7月30日〜11月3日、東京都写真美術館で開催された展覧会 「いわいとしお×東京都写真美術館
光と動きの100かいだてのいえ
―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ」 で、筆者が撮影した「時間層Ⅱ」の展示風景です。
画面のちらつきはビデオ撮影によるもので、肉眼ではちらつきません。
「STEP MOTION」1990年 ©Toshio Iwai