アニメーションでの変形
「変形」には、「変容」「変態」「変貌」「変化(へんげ)」「変身」など様々な言い回しがあり、英語でも「metamorphosis」「transformation」「morphing」などの呼び方があるようで、それだけ深く人々の関心を集めて来たと言えます。
アニメーションは形や動きを自由に操れるため、他のメディアに比べて大胆な変形が可能です。そこには形が変化する驚きだけでなく、意味が変容することでその対比について考えさせる効果も生まれて来ます。
何を何に変えるかだけでなく、前後の関係やタイミング、どこをどう変えるかも重要で、人間の視覚や認知の仕組みにも大きく関わっています。
メタモルフォーゼ作品例
ハンガリーのドーラ・ケラシュテシュ(Dora Keresztes)は、メタモルフォーゼを使った作品を多く制作していて、ここで紹介する「イチ、ニ、サン」も、めまぐるしく変化するカラフルなイメージは、言葉のない絵本が動き出したような楽しさがあります。
ドイツのライムント・クルメ(Raimund Krumme)の「ロープダンス」は、非常にシンプルな線で構成された画面の中で展開する視覚的な驚きに満ちた作品です。
線で描かれた四角形と一本のロープに見立てた赤い線、上方から現れる二人の男という単純な設定ですが、動きと影の効果を巧みに操って、一個の四角形が壁になったり穴になったりたりして、二人の男のコミカルなやり取りが展開します。
※ 下のサムネールをクリックしてご覧ください。
その他の変形表現例
このページ内でなく、YouTubeのウィンドウでご覧いただける作品です。
01.「声たち(Voices)」」
02.「階段を降りるモナリザ(MonaLisa Descending A Staircases)」
03.「野獣(BESTIAK)」
各作品の紹介記事の下のURLをクリックすると、別ウィンドウでYouTubeまたはVimeoのページが開きます。
※ 下の矢印をクリックすると作品が切り替わります。
『声たち』1985年
「声たち(Voices)」1985年 ジョアンナ・プリーストリー(Joanna Priestley)
プリーストリーがカリフォルニア芸術大学(California Institute of the Arts 通称=CalArts)在学中に、実写映像をトレスして描くロートスコープ技法と、従来の手描きのアニメーション技法を組み合わせた作品です。
話をする作者自身の顔が、話の内容に応じて変化していきます。
「動物農場」での変形例
「動物農場(Animal Farm)」監督:ジョン・ハラス(John Halas)ジョイ・バチェラー(Joy Batchelor) 原作:ジョージ・オーウェル(George Orwell)1954年 からの抜粋
「動物農場」は、動物たちが団結して邪悪な農場主を追い出し、自由を勝ち取った筈が、動物たちを指導したリーダーのブタ達が、農場主と同じ圧政を敷いてしまうという風刺的な内容の長編アニメーションです。
ここでは、偶然窓から部屋の中を覗いたロバの目に映った、驚くべき光景を描いたシーンの一部を抜き出して紹介しています。
この物語のテーマを象徴的に表した印象的なメタモルフォーゼです。