第2章 タイミング技法

No.20

基準点(ローカル座標系とグローバル座標系)


基準点(ローカル座標系とグローバル座標系)について

 

アニメーションでは現実に起きていることを構造的に分析して、再構成することが求められます。例えば、背景と動くキャラクターを分けて作画し、歩きや走りなど、キャラクターが同じ動作を繰り返しているなら、一つのアクションだけを作り、それを使い回しながら背景に対する位置だけを移動させることで、背景の前を通り過ぎる場面などを作ります。
また必要に応じて、背景を何層にも分けて奥行きを持たせたり、キャラクターをパーツに分けて動かす部分だけを作画して省力化を図ります。その際、座標系の考え方は重要で、ローカルな座標系がそれを取り囲むグローバルな座標系の中を移動していると考えます。
座標系の中心にあるのが基準点で、基準点がグラグラしていては、なめらかに移動したり回転したりすることができません。

 

作画例「階段を登る男」

 

階段を登る男の1サイクルだけの動きを用意して、それを繰り返すことで登り続ける場面を作っています。
階段が止まっていて男の位置が移動すればカメラの前を通り過ぎる場面になり、男の位置が変わらず階段が移動していれば階段を登り続ける男をカメラが追いかける映像になります。
さらに階段の後ろに背景があり、男と背景が同じ位置にあれば、エスカレーターに乗った男が同じ位置に留まろうとエスカレータを登り続けているように見えます。

 
         
 

キュウリ夫人とトマト娘

 

スマートフォンが現れる前、日本移動通信(IDO KDDIの前身の一つ)から販売された通信端末(ガラ携の一種)の待ち受け画面のために作ったアニメーションを転用したものです。当時処理能力の制約から、62ピクセル四方の正方形の中でキャラクターを動かし、その正方形を位置移動させることで、小さな待ち受け画面の中をキャラクターが動き回るアニメーションを制作しました。
非常に制約の多い作業でしたが、コマ数を落としたり繰り返しを多用したり、1ドットのピクセルの位置にも気を配ったりして対応しています。
※キャラクターはクライアント側で用意したものを使っています。

 
         
 

「格差社会のLilliputianー黒すけたちの世界」紹介ムービー

2012年度 武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 4年生 田澤咲紀氏の卒業制作「格差社会のLilliputian - 黑すけたちの世界-」を紹介したムービーです。 展示作品自体は、センサーを使い、コンピュータで制御したインタラクティブなインスタレーション作品なので、作者自身が記録映像として撮影・編集したものです。
ローカルな座標系の中で動くキャラクターのコピーが、それぞれグローバルな座標系の中で位置移動して、大勢が登り続ける作品になっています。
展示作品は当年度の優秀作品に選ばれました。

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座標系について

Heliocentrism(ヘリオセントリズム)は地動説という意味で、太陽が中心に位置し、地球を含む他の惑星が太陽の周りを回転しているというモデルです。またGeocentrism(ジオセントリズム)は天動説という意味で、地球が宇宙の中心にあり、太陽や他の星々が地球の周りを回転しているというモデルです。
上図のアニメーションは、黄色の円が太陽、青い円が地球で、太陽系の惑星の軌道を模式化したものです。
太陽が中心の座標系では惑星の軌道は同心円となり単純ですが、地球を中心とした天動説の座標系では大変複雑な軌道となります。
これはどちらが正しいということではなく、座標の設定の仕方で軌道の見え方に違いが出てくるということを説明しています。
※このアニメーションは、ネットに上げられたマリン・クリスターソン(Malin Christersson)のアニメーションを引用したものです。

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