第3章 アニメーション表現の可能性

No.41

シンボライズされたイメージ


 

シンボライズされたイメージ

人間は、シンボル(象徴記号)を操る動物として特徴づけられています。言葉がその典型ですが、文学のみならず、絵画、演劇など、現実の物や状況を直接示すのではなく、暗示し連想させることで、一層インパクトのある意味深い表現となった作品が数多くあります。
ここでは映像作品とイラストレーションの例をいくつか紹介します。

 

アニメーション作品例

 

アニメーションは記号化された画像を扱うため、大なり小なり象徴化されたイメージが展開されます。ここでは特に意識的にシンボリックなイメージやシチュエーション(状況設定)を用いた作品を取り上げています。
これらの他にも、No.55「マクラレンとNFB」で紹介している「隣人」も典型例として挙げられます。

 
※ 下のサムネールをクリックするとムービーが切り替わります。
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「重力(Gravitáció)」フランツ・ロフシュ(Ferenc Rofusz)ハンガリー 1984年
若いリンゴが、年老いたリンゴたちが冷ややかに見守る中、木の束縛から逃れようと暴れます。
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「パサドゥ(Pasà Deux)」ヘリット・ファン・ダイク(Gerrit Van Dijk)、モニーク・ルノー(Monique Renaulr)オランダ 1988年
様々な有名人が戯画化され、音楽に合わせて踊りながら変形を繰り返すパロディ・アニメーションです。
balanceIcon
「バランス(Balance)」ローエンシュタイン兄弟(Wolfgang&Christoph Lauenstein ドイツ 1989年
5人の男が中空に浮かぶ四角い床の上で、釣り上げた宝を奪い合う。極端なシチュエーションの中で展開するアニメーション。
※ 上記ムービーは、YouTubeにリンクして表示しています。YouTubeで削除された場合は表示されないことがありますが、その場合はご容赦ください。  
 
 

ソウル・スタインバーグのイラストレーション

ソウル・スタインバーグ(Saul Steinberg)は、アメリカのイラストレーターで、落書きのような自在なタッチで、物や人だけでなく、文字や地図も取り込んで豊かなイメージの世界を作り上げています。その洒脱でウィットに富んだ作品のいくつかを紹介します。

 
※「The INSPECTOR」Saul Steinberg published by The Viking Press, Inc.1973 から引用
 
  
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「アトミック・カフェ」

アトミック・カフェ(The Atomic Cafe)
監督:ケヴィン・ラファティ(Kevin Rafferty)、ジェーン・ローダー(Jayne Loader)、ピアース・ラファティ(Pierce Rafferty) 1982年
トリニティ・プロジェクトでの核実験から、広島・長崎への原爆投下、ビキニ核実験などの実際の映像のほか、アメリカ政府制作の反共プロパガンダ映画、ニュース映画、大統領の演説音声、ラジオ放送、政府の広報フィルムなど、第二次世界大戦とその後の世界を、既存の映像のみを編集することで、当時の世界の現実と、その怖さ・滑稽さを描いたドキュメンタリー映画です。
プロパガンダの映像は象徴的で誇張された表現が多く、それを編集して見せると逆のメッセージも現れます。
世界に未だに残る力への信奉と、一面的な見方の愚かさを考えさせるユニークなドキュメンタリーで、これも一つの反戦プロパガンダです。

テレビCM「メッセージ」

「メッセージ(Le message)」
監督・原画:ミシェル・フォロン(Jean-Michel Folon)アニメーション:ジュリオ・グラニーニ(Giulio Glanini) 1969年
ジョルジオ・ソアヴィ(Giorgio Soavi)のアイデアを元に、タイプライターで有名なイタリアのオリベッティ社のTVコマーシャルとして制作された作品です。
人気のない街角を通りがかった男が、あるビルの部屋に入ると巨大なタイプライターがあり、そのキーをよじ登って巨大な手紙を書きます。それで紙飛行機を折って夜空に飛ばし眺める、というシンプルなストーリーですが、フォロン独特の叙情的な絵柄と巨大なタイプライターという設定が、寂しさと人恋しさを感じさせる詩的な映像になっています。
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