第4章 知覚の探求とアニメーション表現

No.51

意思を持った正方形


 

意思を持った正方形

No.45「形のつながり」では、離れたふたつの正方形が、動きによって物理的につながって知覚される様子を紹介しましたが、ここでは同じふたつの正方形を使って、人間的な動きをさせてみました。
単なる青と黄色の正方形ですが、動きの演出を加えることで感情や意思を持って行動しているように見せることもできます。
音がなくても動きの意味は感じられますが、音響効果が加わると、俄然、生き生きとしてきます。
ここでは青が黄に詰め寄って拒絶されるという寸劇を演じています。

 
 ※ 効果音のオン・オフは、画面下のボタンをクリックして切り替えられます。
 
 
 

形態の単純化

ヨハンソンの実験では光点をつけた被写体の動きを記録していましたが、ここではエドワード・マイブリッジの連続写真を元に、脛(すね)や腿(もも)などの剛体部分を単純な形に置き換え、動きの印象を残しながら、どこまで要素数を削減できるのかを試してみました。
要素を削っていくと細かい表情は無くなりますが、歩いたり、飛んだり、這ったりする動きの印象は、かなり簡略化しても残るようです。
「這う女」など、両手足があれば、手前の上腕骨や大腿骨の動きだけで、奥の方の骨の動きも感じられます。

 

 
 
 
 
 
 
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象形文字から漢字へ

古代の象形文字は、太古の洞窟壁画に見られるような具象的な絵が単純化されてできたものです。
中国の漢字は象形文字を起源とする代表的な文字のひとつで、さらに抽象化し組み合わせることで複雑な行動や概念的な意味を持たせることもできるようになりました。
しかし同時にそれは抽象化されることで、再現的な元の形態から離れ、学習しなければ理解できない記号となっていきました。 日本では、漢字を元にさらに抽象化して表音文字のひらがなを生み出し、表意文字の漢字と併用することで、日本語を分かりやすい文章にして読めるようにしました。

現在、スマートフォンなどで盛んに使われている絵文字も象形文字の一種だと思われますが、特に顔文字などは、文章に添えることで文面だけでは伝えにくい微妙なニュアンスまで伝えられる便利な道具として用いられています。
これからは、電子的に絵だけでなく動きや音の効果も加えた文字も出てくるかもしれません。

顔文字例
 
 

ピクトグラムについて

ピクトグラム(絵ことば)は、意味する対象の形状を使い、文字や言葉などと違って、事前の学習なしで誰にでも理解できるように形態のエッセンスを抽出しデザインされた図記号(グラフィックシンボル)の一種です。
したがって、文字を使った交通標識、地図や天気図のなどの抽象的なマーク、企業のシンボルマークなどは、ピクトグラムとは異なるとされています。
現代では、国際化し複雑になった公共空間の移動や、身の回りにある様々な機器の操作などが、すばやく円滑に行えるよう言葉に頼らず、遠くからでも小さくても一瞬で理解できるピクトグラムの活用が進み、そのデザインも進化してきました。
日本でのピクトグラムの先駈けとなったのは、1964年に開催された東京オリンピックで、その優れたデザイン性で世界的にも影響を与えました。
ここでは、過去のいくつかのオリンピックのピクトグラムを取り上げて比較・紹介したいと思います。

※ 下の図版をクリックすると拡大ページに移動します。
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