インタラクティブな表現
コンピュータを介在させることによって、人の働きかけによって画像や動き、音が変化する、インタラクティブなアニメーションが可能となりました。これはゲームや科学館などの展示、アート作品などに限らず、様々なメディアに用いられ、日常生活における情報伝達や教育、娯楽になくてはならない技術となっています。
この技術には、現実の被写体を必要とせず人工的に全てを作り出すアニメーションの考え方が活きてきます。
とくにインターネットが普及してからは、遠く離れた人ともヴァーチャルな空間で情報をやりとりしたりゲームで遊ぶことも可能になり、さらに近年ではAIが発達して生成AIが現れ、ネット上の膨大なデータを学習して瞬時に質問に答えたり注文に応じて画像を制作するようにもなっています。
現在では3DCGを使った非常に複雑で臨場感あふれた表現が一般的ですが、ここでは非常にプリミティブなアニメーションながら、単純な操作で動くインタラクティブな特徴を備えた作品を紹介します。
「UNIMATION」
2009年度ゼミの受講生、清水愛子氏の卒業制作『UNIMATION』を紹介します。作品は当時最もよく使われていたAdobe FLASHというアプリケーションで作られたものですが、現在はプラグインがサポートされておらず、ここでは操作する様子を記録したムービーでご覧いただきます。
この作品は丸、三角、四角という単純な幾何形態を組み合わせて形を作るだけでなく、それぞれに動きも付け加えることができ、入れ子細工のように、組み合わせて複雑な形や動きの造形が可能になります。
インタラクティブなメディアの特質を活かしたユニークな作品で、優秀作品に選ばれました。
イームズ - マスマティカ展
チャールズ・イームズ(Charles Eames)とレイ・イームズ(Ray Eames)の夫妻は、1940年代から1970年代にかけて、建築、家具、遊具、映像、展覧会など広い分野で革新的なデザイン活動を展開した、戦後のアメリカを代表するデザイナーです。
彼らが設計し、1961年にIBMの後援を得て開催された展覧会「マスマティカ:数の世界‥そしてその彼方(Mathematica: A World of Numbers...and Beyond)は、難解で敬遠されがちな数学の面白さを、インタラクティブな体験型の展示デザインで視覚的に表現し、観客を魅了しました。
それは世界中の展覧会や博物館などの展示に多大な影響を与え、現在に至っています。
最初の会場の建物が1998年に閉鎖後も、マスマティカ展は世界中を巡回し、現在もニューヨーク科学ホール(NYSCI)で常設展示となっていて、そのレプリカがボストンの科学博物館やヘンリー・フォード博物館で展示されたりしています。
https://youtu.be/aUg_rCQKbIs?si=OgIKEu64NnK1LF13
ここでは、その展示作品のいくつかを紹介します。
展示会場では、実物が動いて数学的原理が視覚的に現れる面白さだけでなく、各作品に添えられたパネルで、その原理がわかりやすく解説されていました。
プロトタイプとモック・アップ
マスマティカ展を設計するにあたって、イームズ夫妻はアイデアのプロトタイプ(縮小模型)やモック・アップ(実物大模型)を作って、展示空間を具体化していきました。
現在、3DCGを使って完成イメージを作って広報などにも活用することが一般的ですが、限られたスペースの中で、観客の動線も含めて如何に展示全体を構成し、内容をわかりやすく理解させるために徹底的に工夫・検討する姿勢は、イームズのすべてのデザイン活動に共通しています。