第3章 アニメーション表現の可能性

No.42

インタラクティブな表現


インタラクティブな表現

コンピュータを介在させることによって、人の働きかけによって画像や動き、音が変化する、インタラクティブなアニメーションが可能となりました。これはゲームや科学館などの展示、アート作品などに限らず、様々なメディアに用いられ、日常生活における情報伝達や教育、娯楽になくてはならない技術となっています。
この技術には、現実の被写体を必要とせず人工的に全てを作り出すアニメーションの考え方が活きてきます。
とくにインターネットが普及してからは、遠く離れた人ともヴァーチャルな空間で情報をやりとりしたりゲームで遊ぶことも可能になり、さらに近年ではAIが発達して生成AIが現れ、ネット上の膨大なデータを学習して瞬時に質問に答えたり注文に応じて画像を制作するようにもなっています。
現在では3DCGを使った非常に複雑で臨場感あふれた表現が一般的ですが、ここでは非常にプリミティブなアニメーションながら、単純な操作で動くインタラクティブな特徴を備えた作品を紹介します。

 

「UNIMATION」

 

2009年度ゼミの受講生、清水愛子氏の卒業制作『UNIMATION』を紹介します。作品は当時最もよく使われていたAdobe FLASHというアプリケーションで作られたものですが、現在はプラグインがサポートされておらず、ここでは操作する様子を記録したムービーでご覧いただきます。
この作品は丸、三角、四角という単純な幾何形態を組み合わせて形を作るだけでなく、それぞれに動きも付け加えることができ、入れ子細工のように、組み合わせて複雑な形や動きの造形が可能になります。 インタラクティブなメディアの特質を活かしたユニークな作品で、優秀作品に選ばれました。

 
 
 

「『Come Out』を唄うカエルたち」

画面をクリックするとカエルが現れます。またカエルをクリックすると跳びはねて、音がずれますカエルをドラッグして「カエル消し」の上でマウスアップするとカエルが消えます
この作品は、カエルの鳴き声として、No.36「ライヒの音楽について」で紹介した『Come Out』という曲から、「Come out to show them」というフレーズを抜き出して使用しています。
ライヒはテープに吹き込んだ繰り返す音を二台のプレーヤーで再生して、徐々にずれていく音響の変化を楽しむものでしたが、ここではクリックしてカエルをジャンプさせることで音をずらして、響きの変化を確認することができます。
この作品は筆者(西本)が、1990年代にMacromedia Directorを使って授業での解説用に制作した資料を、Adobe Animateで改変したものです。

※ このムービーのモバイル端末での音の再生は、消音設定(マナーモード)を解除する必要があります。

 
 
  
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イームズ - マスマティカ展

チャールズ・イームズ(Charles Eames)とレイ・イームズ(Ray Eames)の夫妻は、1940年代から1970年代にかけて、建築、家具、遊具、映像、展覧会など広い分野で革新的なデザイン活動を展開した、戦後のアメリカを代表するデザイナーです。
彼らが設計し、1961年にIBMの後援を得て開催された展覧会「マスマティカ:数の世界‥そしてその彼方(Mathematica: A World of Numbers...and Beyond)は、難解で敬遠されがちな数学の面白さを、インタラクティブな体験型の展示デザインで視覚的に表現し、観客を魅了しました。
それは世界中の展覧会や博物館などの展示に多大な影響を与え、現在に至っています。
最初の会場の建物が1998年に閉鎖後も、マスマティカ展は世界中を巡回し、現在もニューヨーク科学ホール(NYSCI)で常設展示となっていて、そのレプリカがボストンの科学博物館やヘンリー・フォード博物館で展示されたりしています。

ここでは、その展示作品のいくつかを紹介します。
展示会場では、実物が動いて数学的原理が視覚的に現れる面白さだけでなく、各作品に添えられたパネルで、その原理がわかりやすく解説されていました。

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プロトタイプとモック・アップ

(上)プロトタイプを撮影するイームズ夫妻

マスマティカ展を設計するにあたって、イームズ夫妻はアイデアのプロトタイプ(縮小模型)やモック・アップ(実物大模型)を作って、展示空間を具体化していきました。
現在、3DCGを使って完成イメージを作って広報などにも活用することが一般的ですが、限られたスペースの中で、観客の動線も含めて如何に展示全体を構成し、内容をわかりやすく理解させるために徹底的に工夫・検討する姿勢は、イームズのすべてのデザイン活動に共通しています。

(上)展示空間のプロトタイプ
「確率マシーン」の(左)プロトタイプ(中)モック・アップ(右)完成展示物
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インタラクション・デザイン例

1985年に任天堂からファミリーコンピュータのゲームソフトとして第1作が発売されたスーパーマリオシリーズは、メディアが進化するごとに新作が発表され、全世界で累計売り上げが4億本を越す大ヒット作となりました。このきっかけとなった第1作「スーパーマリオブラザーズ」のインタラクション・デザインを2014年に解説したYouTubeのページがありますので紹介したいと思います。

以下はそのナレーションの日本語訳を載せたサイトからの引用です。

引用元ーコタク・ジャパン・ブロマガ
https://ch.nicovideo.jp/kotaku/blomaga/ar550767

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解説ナレーション

スーパーマリオの1-1が完璧な理由

ゲーム開始直後の画面からしても、システムの少ないリソースを上手くやりくりし、ゲームに不慣れな世代にも受け入れられるように様々な工夫が施されています。
画面上に沢山テキストを表示させたり、説明書を読ませたりすることなく、プレイヤーに何が可能かを認識させ、プレイを通じたスキルの向上を可能にするという、アフォーダンスの用い方と学習曲線デザインの素晴らしい手本が詰まった作品です。

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