距離感の表現
二次元平面上で対象物の距離や位置を感じさせる技法として、空気遠近法や線遠近法、色彩遠近法、上下遠近法などの技法があるようです。また重なり具合も物の前後を感じさせる大事な要素です。
私たちは様々な情報を得て距離感を判断していますが、たぶん最も一般的で強く感覚に訴えるものは線遠近法です。
ここではノーマン・マクラレンとレネ・ジョドワンの作品「球(Sheres)」の技法に倣(なら)って作成した、大きさや移動距離を変えることで奥行きを強く感じさせるアニメーションと、私が度々利用していた新幹線の車窓からの風景を紹介したいと思います。
切り抜き技法での空間表現例
線遠近法に基づいた方法で大きさの異なるキャラクターを多数用意し、それを次々に置き換えることで遠くから近づいてくる表現をしたり、一列に並んだキャラクターのそれぞれの動く速度を、手前は速く遠くは遅く移動させることで奥行きの深さを表すことができます。
ここでは「奥から手前への移動」「上下の移動」「左右の移動」を通して、形の大きさと移動距離による空間表現をご覧いただきます。
「球(Sheres)」について
「球(Sheres)」1969年は、ノーマン・マクラレンがレネ・ジョドワンとの共同監督で制作した切り抜き(Cut-out)技法の短編アニメーションです。
このアニメーションは、切り抜いた円形の紙に陰影をつけて球体らしく見せたものを、様々な大きさで用意しておき、位置を変えたり大きさの違う円に置き換えたりして撮影しています。
平面のアニメーションですが、3DCGのような奥行きのある不思議な空間を作り出しています。 球体の計算された幾何学的な動きが、カナダのピアニスト、グレン・グールドが奏でるバッハの曲に非常にマッチしています。
※ このムービーはYouTubeでご覧いただけます。下記URLをクリックすると別ウィンドウが開きます。
・『Spheres』 ノーマン・マクラレン、レネ・ジョドワン 1969年