第2章 タイミング技法

No.18

方向性の表現


 

方向性の表現について

 

私たち人間は、社会的な動物なので、特に周りにいる人々の振る舞いに注意を払う性質があります。対面する人の表情には敏感で、身体の仕草や微妙な顔の動きと視線によって相手の感情を読み取ろうとします。
パーツの位置関係を利用した表現も、二次元的なアニメーションにとって重要だと考えます。

 

切り抜きアニメーションでの方向性の表現

 

切り抜きアニメーションでは、パーツの置き換えでキャラクターの顔の向きや身体の向きを変化させます。顔の場合は、頭部と、それに付属する目や鼻、口、耳の位置の相関関係で顔の向きを表します。
ここでは単純な顔と、少し複雑な身体の向きを変化させたアニメーションの例をご覧いただきます。

 
         

マツタケとアカマツの共生

上記、方向を表す作画例として紹介したアニメーションの、元となるシーンをご覧いただきます。これは日本テレビの「目がテン!」という科学番組の「マツタケ」の回のために制作したアニメーションです。
アカマツとの共生関係のなかで、マツタケがなぜ栄養分の少ない乾燥気味の土地でしか生き残ることができないかを、キャラクター仕立てで説明しています。

ホロウマスク錯視例

ホロウマスク錯視は、我々が立体物を見た際に、目や鼻、口などのパーツの位置関係が変化することで立体を認識する性質を逆手にとって、凸面ではなく凹面でも凸面として認識してしまう錯視です。
この錯視は、科学館の展示物として時々見かけますが、ここでは簡単な紙の立体モデルや、街の不思議な造形物の例を取り上げています。
※下のサムネイル画像をクリックしてムービーを選んでください。

        

ドラゴンとトラ
私の部屋の本棚に置いているホロウマスク錯視の紙の置物を撮影したものです。これらは「イリュージョンフォーラム」(https://illusion-forum.ilab.ntt.co.jp)というサイトからダウンロードした紙立体のモデルで、左側は「Jerry Andrus dragon」で、もう一方はそれをトラに置き換えて作られた作品です。
左右に視点を動かすとモデルの顔の向きが追いかけてくるように見えます。ビデオカメラは一眼視なので、両目で実物を見たときよりも容易に錯視効果が現れるようです。 顔の部分が凹面なので、そこだけ陰影は逆になっていますが、人間の脳はそれでも凸面として認識します。

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ホロウマスク錯視について

ホロウマスク錯視(Hollow Mask Illusion)の「Hollow」とは「空洞の」とか「くぼんだ」という意味があります。
顔や体を凸面として見る私たちの脳の性質は非常に強力なため、凹面に描かれた像も、私たちが移動することで変化するパーツの位置関係を凸面上での変化として感じてしまい、あたかも像が動いているように見えます。
近くから両目で見た場合は、左右の視差が生じてこの錯視が比較的起きにくいですが、ビデオカメラなどひとつの視点から見た場合は、顕著に現れるようです。
近くから両目で見た場合でも、一旦この錯視が現れると容易には消えません。

 
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