バイオロジカル・モーションについて
バイオロジカル・モーション(Biological Motion)は生物学的運動ともいい、ヨハンソンの研究で広く認知されています。
彼は、被写体の形態を消して動きのみを捉える方法として、小さな光源を動くものに装着し、暗闇の中で光源の動きだけを抽出する点光源表示法(point-light display)を使用しました。
具体的には、肩、腰、膝、足首などの関節部分に光点をつけた人物が、暗闇で運動する様子を撮影したものですが、そこで捉えられた映像は驚くべきもので、我々はそれを見た瞬間に人の動きだと認識し、微妙な動きの特徴まで感じとってしまいます。
これは剛性仮定に従って、たとえば腰、膝、足首などにつけられた光点の動きが、太腿(ふともも)や脛(すね)といった剛体(形の変わらないもの)として認識され、それぞれの振り子運動の入れ子構造が、足の動きを感じさせる結果だとされています。
ここではヨハンソンの実験ムービー「2-Dimensional Motion Perception」を、YouTubeとリンクして紹介しています。
※ ここでのムービーは、YouTubeにリンクして表示しています。YouTubeで削除されて表示されないことがありますが、その場合はご容赦ください。
3-Dimensional Motion Perception
ヨハンソンはさらに点や線や面の動きが三次元の立体的な動きに見える仕組みを実験で探っています。
ひとつの点の動きだけでは立体感は曖昧ですが、複数になったり線や面が大きさを変え、動きの軌道も調整すると立体的な動きに見えてきます。
ここでは「2-Dimensional Motion Perception」の続編「3-Dimensional Motion Perception」を、YouTubeとリンクして紹介しています。
※ ここでのムービーは、YouTubeにリンクして表示しています。YouTubeで削除されて表示されないことがありますが、その場合はご容赦ください。
G.ヨハンソンのその他の実験
G.ヨハンソンは、バイオロジカル・モーションの実験と同時に、動く光点や形態の見え方を実験を通して調べています。
ここでは上記実験ムービーと重複する部分もありますが、「別冊 サイエンス 特集 視覚の心理学 イメージの世界」日本経済新聞社 1975年 に掲載されたヨハンソンの論文「人は動くものをどう見る」から、彼の実験内容を説明した図版に基づいて、インタラクティブなアニメーションとしてシミュレートしてみました。
また、アニメーションに添付した解説文は、論文に掲載された図版と文章を、そのまま載せています。
この論文ではムービーと同様に「人間は個々の物体を、三次元空間の中を運動する、一定のユークリッド的形態を持ったものとして知覚する傾向がある。」という仮説が検証されています。
バイオロジカル・モーション
実験ムービー「2-Dimensional Motion Perception」から、椅子に座った人間が立ち上がって動きだすカットを抜き出し、点をなぞって、動きをアニメーション化してみました。
ボタンをクリックすると、身体の各部分の光点を消すことができます。
右うでや右あしだけの場合、光点の点滅が気になりますが、身体全体の光点が現れると、剛体としての胴体や左うで左あしに隠れていることが分かり、あまり気にならなくなります。