戦後のヨーロッパ
ここでは第二次大戦後、東西に分断されたヨーロッパで生まれた、アメリカとは異なる美学・技法のアニメーションをいくつか紹介したいと思います。
社会主義圏で人形劇の伝統のあったチェコから生まれた巨匠トルンカとゼーマン、また資本主義圏からは、若者の圧倒的な支持を集めたサイケデリック・アートやロック音楽を体現したイギリスの長編アニメーション「イエロー・サブマリン」、”彫刻のようなアニメーション”を求めて独自の装置「ピンスクリーン」を考案し、フランスで不思議な陰影のある作品を作ったアレクセイエフとパーカーをご紹介します。
下のタイトルをクリックしてお選びください。
・イジー トルンカの人形アニメーション ドキュメンタリー・ムービー
・『手(Ruka)』イジー・トルンカ 1965年
・カレル ゼーマンの特殊効果技法 ドキュメンタリー・ムービー
・『イエローサブマリン』1968年 紹介ムービー
トルンカの人形アニメーション
アニメーション作品を手がけるようになったのは、第二次大戦後プラハの国立映画製作所のディレクターに就任してからで、アメリカでの商業的なアニメーションとは一線を画す、社会主義圏ならではの芸術性の高い作品の数々を生み出して、国際的に知られていきます。
人が糸で操る人形劇や日本の人形浄瑠璃などがそうであるように、トルンカの人形は、まばたきをしたり口をあけてしゃべったりはしませんが、体全体の仕草や前後の文脈のなかで、悲しさや恐怖などの感情を見るものに読みとらせます。
これは顔や体の動きが目まぐるしく変化し、エネルギー溢れる表情豊かな演出が主体のアメリカのカートゥーン・アニメーションとは対極をなすものだといえます。
トルンカの元からは優れたアニメーション監督も輩出していて、日本の川本喜八郎やチェコのブジェティスラフ・ポヤール(Břetislav Pojar)が有名です。
このドキュメンタリー映画は、トルンカが人形や舞台装置の造形から動きの演出に至るまで、細心の注意を払って関わっている様子が紹介されています。 また彼が長編人形アニメーション作品のみならず、セルアニメーションや切り抜きアニメーションなどへの造詣も深く、映像を作り出す上で工夫を凝らしていたことがわかります。