第1章 アニメーションの原理

No.09

ダイレクト・ペインティングについて


 

ダイレクト・ペインティング例

ダイレクト・ペインティングは直接映画のフィルムを加工してイメージを得る手法で、露光させずに現像した真っ黒なフィルムの乳剤を引っ掻いて絵を描いたり、乳剤を洗い流した透明なフィルムに描いたり、スタンピングをしたり、様々なものを貼り付けたりします。
この技法はダイレクト・フィルム(あるいはカメラレス・フィルム)とも呼ばれ、レン・ライ(Len Lye)が、イギリスの郵政省のために作った『カラー・ボックス(A Colour Box)』が最初の作品と言われています。
その後、ノーマン・マクラレンがさらに技法を深め、『垂直線』や『モザイク』といった作品に発展していきます。(No.55 「マクラレンとNFB」参照)
また、アメリカのスタン・ブラッケージも透明なフィルムに蛾の翅や葉っぱなどを貼り付けて『モスライト(Mothlight)』という作品を作っています。

・『カラー・ボックス(A Colour Box)』レン・ライ 1935年

・『フリー・ラディカルズ(Free Radicals)』 レン・ライ 1958年

・『モスライト(Mothlight)』スタン・ブラッケージ 1963年

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ムービー情報・アイコン

「カラー・ボックス」

Movie Image

レン・ライは、実験映画とキネティック彫刻で知られるニュージーランド出身のアーティストです。
彼は1926年にロンドンに移住し、英国郵便局(GPO = British General Post Office)と提携してコマーシャル作品を作る機会を得て、1935年に「A Colour Box」を制作しました。
この作品は、世界最初のダイレクト・ペインティング技法のアニメーションとされているもので、乳剤を洗い落とした透明なフィルムに、直接塗料を塗りつけたり紙や布などでスタンピングしたりして、一連の画像が作られていきます。
これを上映すると、スクリーンに大きく拡大された映像は、細かなテクスチャーと荒いダイナミックな動きを伴って、この技法ならではの、鮮やかな色や形が踊るような抽象アニメーションになります。
レン・ライは、映画を外界の「現象を記録する」メディアではなく、「動きを創造する」メディアと考えていました。
これはアニメーションの本質的な考え方のひとつと言えます。

Image

「A Color Box」のフィルムの一部

(この画像はモノクロですが、実際はカラーです)
※「Experimental Animation」Robert Russet & Cecile Starr p.67 の写真を加工・転載
 
 
 
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