第4章 知覚の探求とアニメーション表現

No.49

影による距離感


 

影による距離感

物体があっても光が無ければ見えませんが、光があれば物体の面に「陰」ができ、物体に隣接する他の面に「影」が現れます。
どちらも空間を感じさせる重要な要素ですが、「陰」は立体感「影」は物と物との間の距離を感じさせる強い効果を持っています。

 

浮かびあがる人

左右の人の形をクリックすると、その形が手前に浮かび上がるように見えます。
しかし実際は、影の方が下方に動いているだけで、人の形は静止したままです。
左上の「マス目の線」をクリックすると、赤い線のグリッドが現れます。
静止したグリッド越しに見ると、影の形だけが下方に動いていることが確認できると思います。

 
 
 

影による軌道の変化

地面に落ちる物体の影が、地面との距離感をいかに強く感じさせているのかを表しています。

影はドラッグして移動できます。
「再生」ボタンをクリックすると一番左の球だけになり、その球が右に動きますが、設定された影の影響を受けて軌道が変化して見えます。
「戻る」ボタンをクリックすると、影の位置がリセットされます。
「線」ボタンをクリックすると軌道を表す線が現れ、ボールの軌道は変化していないことが確認できます。
「影」ボタンをクリックすると、影が消えたり現れたりします。

このムービーは、並んだボールと影をキーフレームとして、それぞれがその間を中割りした動きで移動します。

 
※ ここでは、Kersten, Bülthoff, Schwarts, & Kurtz(1992)の、「チェッカーボード上の球のデモンストレーション」を改変し、インタラクティブ性を加えて紹介しています。
 
 
 
 
 
インフォメーション・アイコン

「陰」と「影」について

光が物体に当たっている場合、物体の表面で光源からの光が当たらず暗くなる部分を「陰」と言い、物体が光を遮るために地面や壁などの面にできる暗い部分を「影」と言います。
「陰」と「影」は、どちらも物体の立体的な形状や環境での状態を知る上で重要な手がかりになります。
月が、大昔から人々が眺めていたにも関わらず、球体であるとはなかなか認識されて来ませんでしたが、それは地上で普段目にするような包囲光に囲まれた球体とは明らかに違っていて、球体として認識する手がかりが乏しいためです。

下の図は、赤い円を球体に見せるための工夫を表したものです。

  • 円の光沢 強い光源がある場合、球体の面は特に明るく反射する部分が現れます。
  • 円の陰 光源の大きさや周りの乱反射によって、明るい部分と影の部分の境目はグラデーションとなります。
  • 照り返し 地面(床)など近くの面に当たって反射した光や、他の光源の弱い光などで、陰の部分の縁がわずかに明るくなります。
  • 赤い円 形を認識する上で、図の色が地(背景)と異なる事は重要な要素です。
  • 地面の影 地面に落ちる影は地面と物体の距離感を強く表し、環境の中での実在感を強めます。
  • 背景の空 地面(床)の縁が現れることで、空間の広がりが現れます。
  • 背景 この場合、グレーの背景が消えても、その後ろにある白色が背景となって地面の代わりをしますが、絵としての四角い囲み(フレーム)が消えるので少し不安定な感じになります。

各ボタンをクリックすると、それぞれの要素が消えたり現れたりして、効果を確かめることができます。
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