アニメーション映画の黎明期
「動きの再現」から「動きの創造」へ
映画は「幻灯機」「写真」「アニメーション」の技術を統合することで19世紀末に誕生しましたが、まもなく時間的に連続した別々の映像をつなぎ合わせることで、ある物がが突然別のものに変わるトリック撮影が行われるようになります。さらにその後、そのトリック撮影の延長として、動かない物をコマ撮りすることで動いているように見せる「アニメーション効果」を用いた作品も作られるようになりました。
動かない絵を動いているように見せる「アニメーション」は、すでに19世紀前半に誕生していた技術ですが、本来、人が活動する現実空間を一定時間で切り取る映画のカメラを用いて、あえて平面に描いた連続画を一コマずつ撮ることで、「アニメーション映画」となり、メディアとしての表現の幅が格段に広がっていきました。
ここでは、黎明期にあたる20世紀初頭の代表的なアニメーションをご紹介します。
下のタイトルをクリックしてお選びください。
・『電気じかけホテル(El hotel elèctrico)』セグンド・デ・チョーモン 1908年
・『愉快な百面相(Humorous Phases of Funny Face)』J・S・ブラックトン 1906年
・『ファンタスマゴリー(Fantasmagorie)』エミール・コール 1908年
・『恐竜ガーティ(Gertie the Dinosaur)』ウィンザー・マッケイ 1914年
・『ルシタニア号の沈没(The Sinking of the Lusitania)』ウィンザー・マッケイ 1918年
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電気じかけホテル(El hotel elèctrico)
映画の誕生後まもなく、実際の動きを記録して「再現する」のではなく、フィルムというメディアを使ってコマ撮りをする事で、動かないはずの物が動き出す特殊効果を得られることに気づき、その効果を中心にした映画も作られました。
これは立体アニメーションにあたりますが、当時はトリック撮影の一部として意識され、実写映画の中で用いられています。
ここで紹介する作品もそのひとつで、スペインの映画監督セグンド・デ・チョーモン(Segundo de Chomón)による短編映画です。
客がホテルに到着すると、旅行カバンがひとりでに動き出して部屋に納まり、部屋ではブラシが動き出して客の靴を磨いたり、髪の毛を編んだりしてくれます。
電気という当時最新の文明の利器を使った、客にとって夢のようなサービスですが、最後には配電盤の故障によって、悲惨な結末を迎えます。
終盤、ホテルの機械室でトラブルが起きる場面では、ショートする雷光がフィルムに直接描かれています。