予備動作と後(あと)動作
立ち上がったり物を投げたりという何気ない行為にも、私たちは重心を移動させたり腕を構えたりといった無意識の動作を付け加えています。アニメーションの演出を行う際に、それらを考慮することは非常に重要になります。
それは動きの不自然さを排するだけでなく、キャラクターの感情や身体の状態を強調したり、置かれた状況を見るものに感じさせる強い効果があります。
単純な動きでの比較
速い動きや大きな動きを演出するためには、動きの前に見られる構える動き(予備動作)と、大きな動きのあとで体勢を整えるような動き(後動作)が重要になります。速い動きの場合、残像をあえて描いたり、かすれた線を付け加えたりもします。
ここでは円と矩形という単純な形を使って、ぶつかる動きと投げる動きでの、予備動作と後動作がもたらす効果の違いを紹介しています。
予備動作と後動作の強調
予備動作と後動作を強調して、激しいアクションを表現した例を紹介します。
ここでもNo.19「重さの表現」に続いて、チャック・ジョーンズ監督による「ワイリー・コヨーテとロードランナー」から引用しています。
岩壁にトンネルの絵を描いてロードランナーに衝突させようと企みますが、なぜかロードランナーには実際のトンネルとなり、コヨーテがその後を追おうとすると岩壁の絵になります。
コヨーテが思いっきり激しく衝突するさまが、大きな予備動作と衝撃後の後動作で強調されています。
猛スピードで移動できるテニスシューズを手にいれて張り切るコヨーテのシーンです。
描かれているのはほぼ予備動作と後動作だけで、移動する場面は一瞬現れる線( 軌道)のみです。
このように予備動作と後動作をしっかり描けば、速い中間の本動作は省略することもできます。