第2章 タイミング技法

No.30

繰り返し表現での注意点


繰り返し表現での注意事項

 

繰り返しの動きを作る場合に、注意しなければ意図した動きが得られない例をいくつか紹介します。これらは人間の視覚の習性や、限られたフレーム数で動きを作成しなければならないアニメーションの仕組みに起因しています。

 
 
 

参考映像

 

反発現象とは逆になりますが、参考までに1920年代に活躍したアメリカのジャズ歌手・女優、ジョセフィン・ベーカー(Josephine Baker)のダンスを紹介します。素早い脚の動きが、膝に手を置く事で、一瞬交差しているようにも見えます。
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「ワゴンホイール効果」と「ローリングシャッター現象」

「ワゴンホイール効果」と「ローリングシャッター現象」は、ともに高速で動く物体を記録するときに現れる現象で、肉眼で見える像とは違った映像を生み出します。

「ワゴンホイール効果」は、フィルムカメラやデジタルカメラで、レンズで捉えた画像全体を一度に撮影する場合に見られる現象です。この効果は、カメラのフレームレート(1秒間に撮影するコマ数)と被写体の回転速度が同期するときに現れます。例えば、車のホイールやプロペラが実際には時計回りに回転しているのに、フレームレートが変わるとと反時計回りに回転しているように見えたり、静止しているように見えたりします。

「ローリングシャッター現象」は、イメージセンサーが、テレビの走査線のように画像を行ごとに順次記録するデジタルカメラやビデオカメラで見られます。この現象は、センサーが画像全体を一度にキャプチャするのではなく、上から下へ(またはその逆)に順に読み取るために起こります。1画面を記録し終えるまでに被写体が動くので被写体の形が歪んだ画像になります。したがって高速で回転するプロペラなどは曲がって見えます。
ビデオカメラで撮影したものは「ローリングシャッター現象」と「ワゴンホイール効果」が同時に見られ、フレームレートがプロペラの回転スピードと完全に同期したときには、曲がったプロペラが止まっているような映像になります
これは人間の目の錯覚ではなく、カメラなどの撮影機器による機械的・光学的な制約に基づく現象です。
アニメーションでは限られたフレーム数で表現するため、あえてブレた画像で動かし、肉眼視に近い自然な印象を演出します。

 

ワゴンホイール効果

フィルムで撮影された戦闘機の映像です。ワゴンホイール効果によって、プロペラがゆっくり回って見えたり、逆方向に回転するように見えます。

 

ローリングシャッター現象

離陸前(東京都 調布飛行場)

離陸後(空中で機内から撮影)

離陸前の静止状態と、飛行中にビデオカメラで撮影した映像です。ローリングシャッター現象でプロペラが曲がって見えます。撮影時、カメラのファインダーから目を離し肉眼で見ると、ただ半透明な円としてしか見えません。
同時にワゴンホイール効果も起きていて、羽根が震えながら同じ位置に止まっているように見えます。
※ ローリングシャッター現象に関しては、No.54「テレビやビデオが映る仕組み」もご覧ください。

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