重さの表現
アニメーションでは、鉄のように重いものや風船のように軽いものを表すために、色や形の違い、動き始めたり止まったりするときの加速度の違いなどを用います。一般に黒くてゴツゴツした形あるいは台形のように地面にどっしりと落ち着いた形は重く、白く丸い形は軽い印象を受けますが、動き方による印象が一番強力です。
ここでは、加速度の違いによる重さの表現例を紹介しています。
※ この球の陰影のスタイルは、カナダのノーマン・マクラレンとレネ・ジョドワンによるアニメーション作品「SPHERES」に倣(なら)っています。
不条理な世界での重力
ワイリー・コヨーテとロードランナー
アクションの誇張を多用するアメリカのギャグ・アニメーションでも、特に「ワイリー・コヨーテとロードランナー」は、いきなり重さが無くなったり、身体のパーツがとんでもなく伸びたりする表現で、不条理な乾いた笑いを誘います。
ここでは重力を扱った表現の例をいくつか紹介します。
ロケットに乗って空中を進むコヨーテが、ロードランナーに指摘されて自分が宙に浮いていることに気づき、その瞬間に重力が働き始め、落下していきます。
ロードランナーをねらい、コヨーテが梃子(てこ)を使って重い岩を崖から落とそうとするシーンです。
棒が弓なりになるほど力を入れてもなかなか持ち上がりませんが、突然岩が飛び上がり、コヨーテの上にドシン!と落ちてきます。
強力バネでセッティングしたボクシンググローブで、通り過ぎるロードランナーを打ちのめそうと企みますが、フックを外した途端、重いはずの岩の方がはねてコヨーテを崖に打ちつけます。
物理的にはありえない不条理な表現ですが、バネをセットする力感やグローブが戻って来る衝撃などの表現はリアルで、笑いを誘います。