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1年生授業:色彩構成・空間構成

この授業は、視覚伝達デザイン学科 1年生全体に対して通年で行われる複合授業として設定されました。
単に「描くこと」だけでなく、それ以前の、身体を通して「見ること」「触ること」「感じること」をワークショップという形で体験し、そこから生まれる「形」について考えを深めます。
クラスメートとコミュニケーションを図りながら、行為によって生まれる形を発見したり、色の光学的な性質や文化的役割も考え、後期には環境を実際に歩き回って調査し、感じた問題点を地図という形式を用いてプレゼンテーションも行います。
ここでは他の3人の先生方(陣内先生、斎藤先生、荒川先生)と一緒に私が関わった2006年〜2019年のうち、2007年の授業内容を紹介したいと思います。

 
 
 

「造形による対話」

これまで高校や予備校などでデッサンや平面構成を学び入学してきた新入生に、身体活動によって生まれる形や、コミュニケーションをしながらの共同作業で生まれる形について新たな発見をしてもらう授業です。
 

  • No.1&2 
    • 「コミュニケーション・ゲーム」
      全員で身体を使って動き回り、いろいろな「形」を作るゲームをします。
      ここでは入学したばかりで馴染みのない同級生どうしが互いに打ち解けると同時に、自身が複数の人間によって作られる「形」の一部になることで、その形の性質を考えます。
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  • No.3 
    • 「対面似顔絵描き」
      ふたり一組になり、筆と墨汁を使って、生まれた町や好きな食べ物など雑談形式でインタビューしながら相手の似顔絵を描いていきます。
      その後、それを持って二人ずつ教室の前に出て、互いに相手のことをクラスの皆に紹介し合う「他個紹介」をします。
      また残りの時間は、筆を両手に持ち、「右手で左手を、左手で右手を同時に描く」など、ふだんやったことのない書き方でのスケッチを試みます。
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  • No.4 
    • 「さまざまな線の採集・考察」
      木の枝や指、歯ブラシなど様々な材質の物を持ち寄って線を描いたり、ふたり一組でルールを決め一枚の大きな紙に同時に線を描いていったり、目を閉じて聞いた音や、激しく手を叩いた後の感覚を線で表したりします。
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  • T・A 
    • 「トラストウォーク」
      ふたり一組になり、ひとりは目隠しをし、もうひとりは近くから声のみによって案内しながら、約50分構内を裸足で歩き回り、休憩を挟んで交代します。
      視覚を遮断することで、聴覚や触覚、嗅覚を研ぎ澄ますことになり、環境を新鮮に捉え直すことにつながります。
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  • No.5 
    • 「環境で描く」
      教室を出て小平市立中央公園や大学構内で、グループごとに分かれて、大きな紙を広げ、いろいろな素材や行為でできる線を採集します。
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  • No.6 
    • 「マクラレンによる映像+α」
      フィルムというメディアの特性を生かし、様々なアニメーションを製作したノーマン・マクラレンの作品を中心に鑑賞し、技法の説明もします。
      ここでは、動きや音を伴った「線」の面白さや、変形していく形の驚きを体験し、描くことの可能性を感じてもらうことがねらいです。
      ※ ノーマン・マクラレンについては、No.55「マクラレンとNFB」参照してください
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  • No.7 
    • 課題「100枚ドローイング」
      これまで行ってきたドローイングをA4サイズ100枚程度にまとめ、バインディングし、表紙をつけて提出します。(提出時、各クラス内で閲覧・発表したのち、講評を受けます)
      この一連の作業を通して、学生たちはコンテンツの編集、製本、プレゼンテーションの体験をします。
 

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「コミュニケーション・ゲーム」
体育館などの広い空間の中で、全員で声をかけたったり動き回ったりして、いろいろな形を作っていきます。
 
「トラストウォーク」
ふたり一組になり、片方が目隠しをし、もう片方は言葉のみで誘導しながら広い構内を裸足で歩き回ります。食堂に入ったり螺旋階段を昇ったりしながら、構内の環境を改めて感じとります。
 
「環境で描く」
このグループは、構内で二階の踊り場から墨汁の入った風船を落として、弾け散るダイナミックな線を作りました。
面白い線を作る方法を皆で考案しながら、さまざまな表情の線を採集していきます。
 
 

「色彩を感じる」

色の生理的、文化的仕組みを体験しながら学び、考える授業です。
均一な色面を手作業で作り、白黒のグラデーションから12色環を基にしたカラーチャート作成することで、微妙な色の違いを感じる眼を養います。
また色の同化作用や補色効果、錯視現象を学び、それらが食品やポスター、街のサインなどにどう生かされているのかを、グループで調べプレゼンテーションをします。
 

  • No.1 
    • 「色の特別講義」
      暗く広い展示空間に全クラスの学生を集めて行われた石塚英樹講師(現、教授)による講義です。
      絵の具のCMYK混色や光のRGB混色、色立体、屈折する光の仕組み、点滅する光の生理的現象などを、実際に学生たちの前で実験して見せながら、具体的に分かりやすく説明していきます。
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  • No.2 
    • 「色彩を感じる」
      画用紙やケント紙に、鉛筆で均一に塗り込められた矩形を描いたり、滑らかな白黒のグラデーションになるようグループで手分けして均一な色面のチップを作り並べて、クラス内で評価したりします。
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  • No.3 
    • 「色を組み立てる」
      身の回りの印刷物から集めたり、絵の具などで自作したりして、均一な色面で一辺5㎝の正方形、100枚のチップを用意します。
      それらを教室に持参してグループで整理し、床に並べて12色環を作ります。また、それを基に皆で相談しながら大きなカラーチャートを作成します。
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  • No.4 
    • 「色を調べる」
      「ブラックユーモア」や「イエローカード」「グリーンベルト」「ブルーマンディ」など色の名前のついた言葉を集めて、言葉から連想する色や意味を描いたカードを作り、分類して「色の物差し」を作ります。
      その「色の物差し」を元に各グループでテーマを決め、調査し、内容を深めていきます。
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  • No.5 
    • 「オープンキャンパスでの発表」
      調査・研究結果をパネルにまとめ、学内のオープンキャンパスで展示・発表しました。
      下記はCクラスでのグループごとのテーマ例です。
       
      A班:「一色多彩 - 玉虫色の不思議」
      水溜りに浮いたガソリンの膜やCDの裏面に現れる虹色のように、見る角度によって色が変わる「構造色」について調べた結果を紹介しています。
       
      B班:「世界色図」
      色の好みが国によって違うのではないか?というテーマで、各国の民族衣装や町並みによく使われている色、またそれが好まれている理由を調べて、その結果をもとに各国の独自の三色国旗を作ってみました
       
      C班:「Color Affordance - 色から得る商品イメージ」
      美容製品、洗剤、食品、電子機器などカテゴリーに分けた商品のパッケージやロゴに見られる配色を調べ、色彩が人に与える効果を調べています。
       
      D班:「きせかえガーナチョコレート - 色の持つ効果」
      チョコレートのパッケージに使われている色の効果を、赤以外にいろいろな色に変えてみることで比較検討し、一般に食品には有機的な色が好まれ、無機的な色は敬遠される傾向があるとの結論がでました。
       
 
 
 
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「色を組み立てる」
 
グループごとに、各自が持ち寄ったカラーチップを集めて、明度、色相、彩度で分けて整理していきます。
 
「Cクラス各班の展示パネル」
クラス内での発表の後、6月中旬のオープンキャンパスで、壁に張り出して展示された各グループのパネルです。
 
 
 
 

「空間を記述する」

身の回りの生活空間を私たちがどのように認識しているのかを考え、その空間を調査し記述する新しい方法を模索します。
前提講義として、さまざまな地図のあり方が説明されたのち、学生たちは実際に構内を歩き回って、廃棄物や騒音、危険な場所、教室への近道、快適な空間など、環境の多様な側面から独自のテーマを見つけ、アンケートや実験なども含めて調査し、独自の地図を作って、最終的に展示・発表を行います。
 

  • No.1 
    • 「地図の講義」
      環境デザインが専門の斎藤啓子先生による前提講義です。
      都市空間が場所によって人々にどのように捉えられているかを分析したケヴィン・リンチの「都市のイメージ」や、世田谷商店街のイラスト地図の紹介など、様々な地図のテーマや調査の仕方、記述の仕方があることが説明されます。
      その後、各クラスに分かれ、入学以来体験した記憶をもとに、「ムサビの中の気になる空間」を模造紙を手でちぎって表現し、床に並べて皆で違いや共通点を話し合います。
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  • No.2 
    • 「空間の調査・記述
      各自にムサ美構内の白地図が配布され、各自、場所の記憶のコメントを記入していきます。
      そこには、時間、動線、密度、明暗、匂い、音、人の違い、聞こえてくる言葉、認識されている場所、認識されにくい場所、などが含まれます。
      その後、グループごとに記入された白地図を持ち寄り、気になる場所を話し合って必要なら皆で直接現場を見にいきます。
      また、時間、音、距離、数量、等々によって、さまざまな物差しがあり、適切な物差しを見つける必要性が教員から説明されます。
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  • No.3 
    • 「展示・発表」
      この授業の最終課題として、構内環境で他の人に紹介したい場所や事象をグループごとのテーマとして取り上げ、調査して、分かりやすく空間を記述した作品を作り、プレゼンテーションを行います。
      下記はCクラスでのグループごとのテーマ例です。
       
      A班:「MauMauMap」
      「時間もない、お金もない、愛だけはある!そんなMauカップルに贈るMapです。」という表題の、学内デートマップです。
      それぞれの場所の特徴がアイコンで示され、場所の写真も引き出して観ることのできる仕掛けもあります。
       
      B班:「MAUっちゃうな 危険で‥」
      滑りやすい場所、雨に濡れる場所、急な段差のある場所、螺旋階段など、構内で気をつけるべき場所を示した地図です。
       
      C班:「課題攻略MAP」
      視覚伝達デザイン学科の学生たちが課題をこなすために必要になる機器やソフトウェアが用意されている場所を、ビルの何階にあるかを示すため半立体のパネルで表した作品です。
       
      D班:「合格してMAU? 入試会場案内地図」
      当初、「災害後の地域住民の避難場所としてムサ美がどう機能するか」をテーマに進めていましたが作業は難航し、「ムサ美内の道(の表情)の地図」に変更後、最終的には「受験生に分かりやすい地図」となりました。
       
 
 
 
 
 
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「ムサビの中の気になる空間」
 
教室内で各自が記憶をもとに、いつも利用している場所や動物のいる場所、面白い形の建築物など、構内の場所の風景を模造紙をちぎって再現します。
その際、切り離すことは禁じられていて、ちぎる行為と折り曲げる行為のみが許されています。
 
「展示パネル例
A班:「MauMauMap」パネルに場所の写真が隠されていて、表面から飛び出した紐を引っ張ると引き出すことができます。
B班:「MAUっちゃうな 危険で‥」構内で見つけた気をつけるべき場所を、アイコンを使って示しています。